No.B1F_ap

 作成 1998.2

 

アルバート・パイクの“予言”

 


アルバート・パイク(1809~1891年)

 

謎の男、アルバート・パイク


弁護士、詩人、多作な作家として活躍していた南部連邦の将軍、アルバート・パイクは、1857年に秘密結社イルミナティの最高幹部(最高位33階級)にまで登り詰め、「黒い教皇」とまで呼ばれるようになった男である(彼は「KKK」の創始者でもある)。

 

 

彼が1871年に、イタリア建国の父であるジュゼッペ・マッチーニに送った書簡(手紙)には、“予言”ともいえる恐るべき「未来計画」が書かれていた。

それによると、まず、「世界を統一するために今後3回の世界大戦が必要だ」と書いてあり、

1回目はロシアを倒すために、2回目はドイツを倒すために。3回目はシオニストとイスラム教徒がお互いに滅し合い、いずれ世界の国々もこの戦争に巻き込まれ、それが最終戦争に結びつくだろう」

と書かれていた。

 

アルバート・パイクの“予言”(未来計画)の詳細


この手紙の内容をもっと詳細に紹介すると、

次のような恐るべき“未来計画”が書かれていたのである。

 

 

第一次世界大戦は、ツァーリズムのロシアを破壊し、広大な地をイルミナティのエージェントの直接の管理下に置くために仕組まれることになる。そして、ロシアはイルミナティの目的を世界に促進させるための“お化け役”として利用されるだろう。」

第二次世界大戦は、『ドイツの国家主義者』『政治的シオニスト』(パレスチナ地方にユダヤ人国家を建設しようとする人々)の間の圧倒的な意見の相違の操作の上に実現されることになる。その結果、ロシアの影響領域の拡張と、パレスチナに『イスラエル国家』の建設がなされるべきである。」

第三次世界大戦は、シオニストアラブ人との間に、イルミナティ・エージェントが引き起こす、意見の相違によって起こるべきである。世界的な紛争の拡大が計画されている……」

「キリストの教会と無神論の破壊の後、ルシファーの宇宙的顕示により、真の光が迎えられる……」

 

 


「予言は当たるものではなく、当てるものだ!」


この手紙が書かれたのは1871年8月15日

この時、まだ第一次世界大戦(1914年勃発)も、第二次世界大戦(1939年勃発)も起こっていなかった。この手紙の中に書かれている「ドイツの国家主義者」を「ナチス」に、「政治的シオニスト」を「ユダヤ人」に置き換えると、第二次世界大戦の構図をはっきりと捉えていることが分かる。


一番不気味なのは、中東での紛争を引き金にして「第三次世界大戦」の勃発を予想している点であろう。

 


アルバート・パイク

 

もちろん、当館はこのアルバート・パイクの“予言”を、そのまま信じるつもりはない。念のため。

しかし、「予言は当たるものではなく、当てるものだ!」という言葉がある。この聞き慣れない言葉の意味は、「予言は自然の成り行きに任せて『当たる』かどうか座して待つのではなく、たとえ荒唐無稽な予言であっても、その予言を実現させるために積極的に介入して(人為的かつ強引にでも)『当てる』べきだ」というものである。

もし、このような考えのもとでイスラエルというユダヤ国家が中東に(強引に)建国されたのだとしたら恐ろしい話である……(そうでないことを祈りたい)。

 


(左)イスラエル(パレスチナ地方)の地図 (右)イスラエルの国旗
 ※ ユダヤ人の国イスラエルは、戦後1948年5月に中東に誕生した

 

自作自演のハルマゲドンを起こそうとした「オウム教団」


ちなみに、日本で「サリン事件」を起こした「オウム教団」は、自作自演のハルマゲドンを起こすことで、自分たちの「予言」を強引に実現させようとしたことで知られている。

彼らも「予言は当たるものではなく、当てるものだ!」という考えを持っていたようである。

 


1990年に麻原彰晃は政治団体「真理党」を結成し、麻原以下教団幹部25人が
衆議院選挙に立候補した。彼らは白い服や象の着ぐるみなどを着て歌い踊るなどの派手な
パフォーマンスを展開したが、全員落選した(麻原彰晃の得票はわずか1783票だった)。

選挙後に麻原は「私は6万票は取れるはずだった。国家権力による妨害があった」と主張し、
被害妄想を強めていく。選挙での「惨敗」が麻原を凶行へと向かわせたと言われている。

 

参考までに、テレビでおなじみの国際政治評論家の外添要一氏は、著書『戦後日本の幻影〈オウム真理教〉』(現代書林)の中で次のように述べている。

「ヒトラーがドイツ国民から『マイン・フューラー(わが指導者)』と呼ばれたように、麻原彰晃もまた全日本人に『尊師』と呼ばれる夢を持っていたのであろう。そして、その夢を実現させるために、大ボラを吹き、人をだまし、テレビで大見栄を切り、パフォーマンスによって、虚構を現実に変えようとした。

ヒトラーと麻原を、ナチス宣伝相のゲッベルスと上祐を比較するのは、そのスケールからして、それぞれ前者に対してあまりにも失礼であるが、オウム真理教の場合、しょせんは毒ガスによってハルマゲドンを実現するしか手がなかったのである。」

 


国際政治評論家の外添要一
(ますぞえ よういち)氏 

 

ハルマゲドンと終末思想


ところで、現在、アメリカには「ハルマゲドン」説を説く人気テレビ説教師が多数存在する。

1985年10月に発表されたニールセン調査は「6100万ものアメリカ人が、自分たちの存命中に核戦争が起こることを防ぐ手立てが全くないと告げるテレビ説教師の番組をコンスタントに見ている」とした。人気テレビ説教師であるパット・ロバートソンの「700クラブ」(連日放映の90分番組)は1600万世帯、全米テレビ所有台数の19%が見ているという(その放送局は彼のものである)。

同様にジミー・スワガートは925万世帯、ジム・ベイカーは600万世帯……などなど、キリスト教原理主義をタレ流すテレビ説教師たちは、アメリカ社会では大人気である。

 


人気テレビ説教師である
パット・ロバートソン

彼は「キリスト教連合」「リージェント大学」
 「CBN」などの設立によっても知られている。
近年は「イスラエルの回復」のために祈り、
 イスラエル政府から表彰を受けている。

 

彼らキリスト教原理主義者たちは、キリスト教が掲げる人間の原罪からの救済計画のシナリオのうち、「ハルマゲドン」を特別強調する。そしてこの「ハルマゲドン」説の核を作ったのは、キリスト教原理主義のスーパースターであるハル・リンゼイである。

ハル・リンゼイは1970年代に登場、リバーボートの船長からボーンアゲイン・キリスト教徒に転身。「キリストのための大学十字軍」の幹部として8年間全米の大学を巡回説教し、それをまとめた著書『今は亡き大いなる地球』が、全米で1800万部を売るベストセラーとなったのである。続編『1980年代 ~ 秒読みに入ったハルマゲドン』『新世界がくる』『戦う信仰』『ホロコーストヘの道』などいずれも人気が高く、アメリカ人の意識の底流を作り上げた。

 


(左)ハル・リンゼイ (右)全米で1800万部を売る
ベストセラーとなった彼の著書『今は亡き大いなる地球』

 

アイラ・チャーナスは著書『ドクター・ストレンジゴッド ─ 核兵器の象徴的意味』の中で言う。

終末思想はキリスト教の中核をなすので、これは当然西欧文明の中核的要素となる。西欧文化に触れる場合、この終末思想に則った歴史観に触れずに済ますわけにはいかない。

単純な終末思想を基礎にしたテレビ映画『スター・ウォーズ』が、今日最も有名な作品となったのは偶然ではない……」

 



イスラエル北部に位置する
「メギドの丘」に立てられている看板

※ この看板にはこう書かれている。「ここは
ハルマゲドン。クリスチャンの伝承によれば、ここで
世界最後の戦争が行われると言われています」

 

混迷の度を深めていく中東情勢


キリスト教原理主義者によれば、イスラエル建国は聖書の預言が成就されたものであり、“神”が行った奇跡の現れだということだ。そして彼らはイスラエルの存在を柱にして信仰心を増幅させ、次に起きる奇跡(核兵器による世界大戦など)を、まだかまだかと待ち望んでいるのだ。

にわかに信じがたいがウソではない。中東が平和であるうちは「キリストの再臨」が来ないと信じているのである。

ここに中東問題の複雑さがある。

 

キリスト教原理主義者たちは、近い将来に「人類最終戦争」が
イスラエルの「メギドの丘(ハル・メギド)」で起きると信じている。
そして、その後に「キリストの再臨」が起きると信じている。
彼らの独自の聖書解説によれば、全世界にいるユダヤ人が
イスラエルに戻るまで預言は全うされないという。

 

ここで注意してほしいのは、「終末思想」はユダヤ教やキリスト教だけでなく、イスラム教にもあるという点である。

イスラム教も痛烈な終末思想を持つ宗教である。コーランには「復活の日」という言葉が70回、「その日」が40回出てくるのを中心に、いろいろな形で「終末」が言及されている。

また、「艱難(かんなん)」こそ「神の国」を接近させてくれるという倒錯が、それぞれの宗教の根幹にある。

 


コーランを掲げるイスラム原理主義者

 

果たしてアルバート・パイクが“予言”した「第三次世界大戦」は本当に中東での紛争を引き金にして勃発するのか?

当館は引き続き、混迷の度を深めていく中東情勢を注視していきたいと思う。

 

イギリスは第一次世界大戦中の1917年に、ユダヤ人に対して「連合国を支援すればパレスチナの地に
ユダヤ国家建設を約束する」という「バルフォア宣言」を行なった。第一次世界大戦後、それまでパレスチナ
を支配していたオスマン・トルコ帝国の敗北にともなってパレスチナは国際連盟の委任統治の形式でイギリスの
支配下に置かれた。第二次世界大戦後にイギリスは深刻化するパレスチナ問題を国連に付託した。1947年に
国連総会はパレスチナに対するイギリスの委任統治を廃止し、パレスチナの地をアラブ国家とユダヤ国家に分割
する決議を採択した。この分割決議はユダヤ人にとって有利なもので、翌年にユダヤ人が独立宣言(建国宣言)
すると、アラブ諸国は猛反発し、すぐさま大規模な武力衝突(第一次中東戦争)が勃発した(新生ユダヤ国家
であるイスラエルは米英の支持を得てアラブ諸国を打ち破り、イスラエルの建国は既成事実となった)。

この両者の紛争は1973年の第四次中東戦争まで続き、多くのパレスチナ先住民が土地を奪われ、
イスラエルの支配地域は拡張していった。半世紀以上たった現在も450万人ものパレスチナ人が
その土地を追われたまま、ヨルダンを始め、レバノン、シリア、エジプト、湾岸諸国などで難民
生活を強いられている。100万人近いパレスチナ人がイスラエルの領内で人種差別的な
厳重な監視下の生活を強いられている。ヨルダン川西岸、ガザ地区ではそれぞれ
170万人、100万人ものパレスチナ人がイスラエル占領軍の
極限的な抑圧のもとに置かれて苦しんでいる。



↑「大イスラエル」の完成予想図

シオニスト強硬派は、ナイル川からユーフラテス川
までの領域を「神に約束された自分たちの土地だ」と主張し
続けている(これは「大イスラエル主義」と呼ばれている)。
いずれ、イラクやシリア、ヨルダンなどのアラブ諸国は
シオニズム信奉者たち(アメリカ軍含む)によって
 破壊(解体)される可能性が高い…。

 

 



── 当館作成の関連ファイル ──

イスラエル国内でメシア待望の気運が上がっている 

ユダヤ過激派たち ~カハネ主義と極右シオニストの実態~ 

果たしてユダヤは日本の味方なのか? 敵なのか? 

 





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