ヘブライの館2|総合案内所|休憩室 |
No.a3fhb401
作成 1998.4
●「日ユ同祖論」について色々な誤解があるようなので、新たにこのファイルを作ってみました。
●最初に注意して欲しいのですが、正確には「日ユ同祖論」という表現は正しくないといえます。
なぜならば、このテーマで研究対象となっているのは主に「日本人と古代イスラエル民族」の関係であって、「日本人とユダヤ人」の関係ではないためです。
※「古代イスラエル民族」=「ユダヤ人」ではないのです。正確には「古代イスラエル民族」>「ユダヤ人」なのです。
●ここはとても重要なポイントなのでしっかり頭に入れて欲しいのですが、古代のイスラエル民族とは厳密には「12支族で構成された連合集団」を指しており、そのうちの1支族である「ユダ族」を中心とした末裔が後に「ユダヤ人」と呼ばれるようになったのです。よって、「日ユ同祖論」を総合的に考察(研究)する場合、正確にはユダ族(ユダヤ人)だけに話を限定するのは正しくないのです。
混乱を避けるために、とりあえずユダ族を除外したイスラエル民族(=失われたイスラエル10支族)だけで話を進めることも可能です。
↑イスラエル12支族の各シンボルマーク
●しかも、現在世界にいる「ユダヤ人」のうち90%以上はアシュケナジム(白人系ユダヤ人)といって、本来のユダ族(ユダヤ人)とは直接関係のない人たちです。もちろん、中にはオリジナル・ユダヤ人と混血した人もいるでしょう。しかし、それはごくごく少数にすぎません。彼ら白人系ユダヤ人の大部分と、日本人のルーツが同じであるはずがありません。
また、現在の「ユダヤ教」は、『タルムード』を中核に据えた「新ユダヤ教」というべきもので、古代のヘブライの宗教(原始ユダヤ教)とは異質なものです。
※ アシュケナジム(白人系ユダヤ人)の実態については、
当館4階「東欧ユダヤ研究室」をご覧下さい。
●こういう点をあやふやにして、全てのユダヤ人を結びつけた“夢物語”を語る日ユ同祖論者がいます。
この手の日ユ同祖論者の話は、1人でも多くの仲間を求めるユダヤ人には心地よく響くかもしれませんが、そこに政治的・宗教的な思惑が絡んでくると、日本人にとってはた迷惑な話になる場合があります。たいていこの手の話は、ユダヤ人たちが日本人に対して「ユダヤ教への改宗」を勧めるというパターンが待ち構えています。いわゆる「日本人のユダヤ化」です。
●こういったこともあって、古くから次のような言葉をよく耳にします。
「日ユ同祖論はユダヤ人による陰謀である──」と。
確かに、日ユ同祖論者の中には露骨ではないものの、シオニズム賛美の人がいるようです。シオニズムの延長線上に、ユダヤ人と日本人の「再会(統合)」を夢見ている人がいるようです。こういう方たちは、ユダヤ人の「選民思想」と「終末思想」に毒されているといえます。
(左)イスラエル(パレスチナ地方)の地図 (右)イスラエルの国旗
(左)聖地エルサレム=シオン(Zion)の丘 (右)エルサレム旧市街
シオニズム運動とは一般的に「ユダヤ人がその故地“シオン(Zion)の丘”に
帰還して国家を再建する運動」と解されている。ここでいう“シオンの丘”とは、かつて
ソロモン神殿があった聖地エルサレムを中心にしたパレスチナの土地を意味している。
●このように日ユ同祖論といっても、唱える人の性格(思惑)によって様々に分かれます。
親シオニズムの人が日ユ同祖論を唱える場合もあれば、反シオニズムの人が日ユ同祖論を唱える場合もあります。また少数派ながら「日本こそが古代ヘブライの伝統を受け継いだ正統イスラエル国家(極東イスラエル)である」と主張する人や、「中東地域よりも日本列島の方が文明が古い(ルーツである)ので、日本に来たとされるイスラエル民族は“里帰り民族”にすぎない」との異論を唱えている研究家(古史古伝支持派)もいます。
●これらの説の中でどれが〈正しい〉のか、ここで詳しく論じるつもりはありませんが、いずれにせよ注意しないといけないことは、現在世界中にいるユダヤ人を全てひとまとめにして、日本人と血統的に結びつけようとすると、大きな問題が生じてしまうという点です。また、行き過ぎた「選民思想」と「終末思想」にも注意(警戒)しないといけません。
●本来であれば、「日ユ同祖論」と表現するよりも「日イ同祖論」(日本と古代イスラエル民族)や「日ヘ同祖論」(日本と古代ヘブライ人)、もしくは「ヘブライ人渡来説」と表現したほうが適切かもしれません。
しかし、世間一般では「日ユ同祖論」という表現のほうが定着しているので、当館(当サイト内)では便宜上「日ユ同祖論」という言葉を使っていくことにします。予めご了承下さい。m(_ _)m
── 当館作成の関連ファイル ──
◆スファラディ系とアシュケナジー系の2つの異なるユダヤ人の実態
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