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作成 2004.5

 

『黒魔術の帝国』について

 

 

●『黒魔術の帝国 ─ 第二次世界大戦はオカルト戦争だった』(徳間書店)という本があるが、

この本は、ナチス・ドイツのオカルト的側面を知る上で、非常に参考になる。当サイトでは扱っていない面白いエピソードが満載なので、興味のある方は一読されてみることをオススメします。

 



『黒魔術の帝国』

マイケル・フィッツジェラルド著(徳間書店)
1992年7月出版/1800円


── この本の内容 ──

ヒトラーの予知能力、トゥーレ協会、運命の槍、
占星術、数秘術、カバラ、骨相学、シャンバラ、空飛ぶ円盤、
地球空洞説、世界永河説、アトランティス……。ありとあらゆる
オカルト秘術が駆使された第二次世界大戦の全貌を
明らかにし、ヨーロッパの魔術的暗黒面に迫る。


1章  ヒトラーの青年時代
2章  運命の槍
3章  ナチスと占星術
4章  反ユダヤ思想
5章  トゥーレ協会
6章  アトランティスを求めて
7章  世界氷河説
8章  空洞地球説
9章  ナチスとチベット
10章 ナチスと空飛ぶ円盤
11章 魔術師としてのヒトラー
12章 ヒトラーの予知能力
13章 ノストラダムスの予言
14章 ナチスと数秘術
15章 シンボルの戦い
16章 ヒムラーの城
17章 ナチスと骨相学
18章 殺人鬼と狂人たち
19章 神々の黄昏
20章 反ナチス・オカルト・グループ

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

●この本の著者マイケル・フィッツジェラルドは、本の最初のページに次のような文を書いている。

少し長くなるが、参考までに紹介しておきたい。


「『オカルト』とは何か? また本当に効果があるのか? こうした疑問が本書の核心に存在する。

オカルトに対する人々の姿勢は、次の3つのグループのいずれかのようだ。

まずオカルティズムのようなことは起こらないし、起こるはずがないと主張する人々。次に、オカルト現象はすべて真実だという人々。そして、筆者のように、本物もあればニセ物もあるというグループ。

たいていの人はオカルトについてなんらかのイメージは持っている。占星術、タロットカード、運勢占い、テレパシー。オカルトについて聞かれれば、すぐこれらのことが頭に浮かぶだろう。だがオカルティズムの領域はそれには止まらず、もっとはるかに広大なものなのである。

あらゆるオカルト現象は人間の心の働きの結果である、というのが私の持論である。われわれは心の力のほぼ10%を使っているにすぎず、残りについてはただボンヤリと知るくらいである。ある種のオカルト・パワーの証拠には歴然たるものがあり、いわゆる『超心理学』以外の科学であっても、とうの昔にそれを認めてしかるべきだった。だがこうした抵抗感も、確固たる証拠の重さと数を前にしていまや崩れつつある。現代の量子物理学者は、旧来のニュートン物理学者よりもむしろオカルティストに近い。」


本書で私が明らかにするのは、世界制覇の目的でナチスがいかに体系的な方法でオカルティズムと魔術の応用を試みたかである。これはナチスの野望であり、オカルト兵器は戦車や航空機やロケット並みに自在に駆使された。彼らのオカルト思想のなかには、まったく馬鹿げたものもあった。たとえば、地球は空洞であるという理論。そのため彼らは、人類がその内部に暮らしていることを『立証』しようとして莫大な資金を浪費する。

だがナチスが他の分野、たとえば人間やときに物質さえもコントロールするマインド・パワーの研究に精力を注ぐとき、狙いの一部はもののみごとに成功する。

思慮深いオカルティストたちは、ナチスの戦争マシーンの目標追求に黒魔術の応用が成功したことを強く警戒して、独自の白魔術を用いてこれに対抗するようになる。ついに戦争が勃発すると、とりわけイギリス人がオカルティズムを大いに用いてナチスに対抗する新兵器を開発する。ロシア人やアメリカ人も負けてはいない。ナチスは独自の『オカルト局』を持ち、これにアメリカ人が原爆開発に費やした以上の予算を注ぎ込む。」


本書の題材の一部はあまりにも奇怪で、ときには筆者でさえ信じ難いと思うこともあった。だが私は慎重を期して、真実だと思う場合とそうでない場合を正確に述べたつもりである。盲目的過信にも独断的懐疑主義にも与せず、私は合理的なアプローチを採用することができた。

オカルトが機能する場合があるのは確かである。第一、人の心に存在するある種の力を活用するのはオカルトにほかならない。だが現実と何らかのつながりがなければそれが機能しないことも確かである。ヒトラーが死んだ兵隊を再び起き上がらせることができなかったのは、空洞の地球をレーダー代わりに活用できなかったのと同様である。これらはヒトラーが戦時中に試みた数々の愚行のひとつである。」


「本書の読者は、ナチ指導層の日常判断にオカルティズムがどれだけ大きな役割を占めていたかを発見するだろう。そのもっとも悪名高い事例が、独ソ戦に際してヒトラーがドイツ兵にロシアの冬の準備をさせなかった直接の理由が、『オカルト局』のヘルビガー主義者が行なった天気予報にあったということである。

しかしながら、ナチスのものの考え方全体が、初めから終わりまでオカルト原理に基づいていたのだ。

ナチ運動の全体が魔術とオカルトに深く根ざしていたことは、どれほど強調してもしすぎるということはない。この事実を、私は執拗に本書で明らかにした。ヒトラー、ヒムラー、ゲーリング、ローゼンベルク、さらにはゲッベルスまでが、そろって魔術およびオカルト思想にどっぷり浸っていた。

だがおそらく読者をもっと驚かせるのは、チャーチル、ルーズベルト、そしてスターリンもまた、ナチスの脅威に対抗する武器としてオカルティズムや魔術を信じ、活用したことである。私は連合国側のオカルト活動の性格と程度にも触れることにした。この分野を取りあげたのはたぶん筆者が初めてだろう。

 

 

●この本の監訳者である博物学者の荒俣宏氏は、次のような「あとがき」を書いている。

参考までに紹介しておきたい。m(_ _)m

 


荒俣宏(あらまた ひろし)

博物学者にして小説家。また
神秘学者、翻訳家としても知られる。

 

「読者諸氏は、この恐怖すべき本を一読されて、満足するよりもむしろ、知的でこころよい飢餓感を抱かれると思う。

もっと知りたい、もっと深く知りたい、ナチス・ドイツの謎めいた非合理的統治原理を!と。

そのように感じさせる入門書は、文字どおり好著であり、読者に限りない探究の刺激を与えうる。たしかに本書は、ナチ・オカルティズムの実に幅ひろい裾野をバランスよくカバーしており、どこをとっても、より深い知的探訪への道を、私たちにひらいてくれる。したがって、この書物の監訳を担当する者として最良の解説を用意するとすれば、それは、本文中でほんのわずかに触れられただけのいくつかの問題について、さらに一歩深く読者を謎の内奥にお連れする文章をしたためることだと思う。

第一に、ナチス・ドイツの海外情報戦略にかかわって、占星術、およびノストラダムスの予言の解釈が効果的に利用された事情についてである。この事件の基本研究は、著者フィッツジェラルドも挙げているように、エリック・ハウの奇書『天神の子どもたち』である。この本は1972年に『第二次大戦中の占星術心理戦争』と改題されたが、ナチ当局に雇われてイギリスが敗れるという予言を世界に流布させる役割をになったカール・クラフトの行動が、実に克明に記されている。

筆者もオカルト史論集『99万年の叡智』(平河出版社)で、ハウの文献を参考に、『ナチス・ドイツの情報戦略と精神療法』という一文をおさめた。クラフトの占星術がナチに利用された最も大きな理由は、あくまでも、情報操作にあった。ノストラダムスがすでにドイツの勝利を予言していたということになれば、敵国におよぼす心理的影響は甚大であろう。」


「ただし、ナチ・オカルト史を解説するひとつの有効なポイントも書いておこう。

実をいえば、ヒトラーやゲーリング、ヘスなどは、オカルティズムを政治に利用しただけでなく、芸術や家庭生活──特に結婚のような個人的問題までも、政治化しようとしたのだ。

たとえばアートでいえば、ピカソやシュールや抽象画を『頽廃芸術』として否定したし、医学までも、健康なものと不健全なものとにわけた。ドイツには古くから精神療法が流行していたが、幹部たちは自らの精神的ストレスが治療できるかどうかを、試金石とした。事実、あのC・G・ユングは1939年秋にヒトラー総統の精神病治療を依頼されたし、女流精神治療家エリカ・ハンテルは、1940年から2年間、生薬治療を試みる『生物学的サナトリウム』に参加し、SS幹部を数多く治療した。また、独特の薬食療法を考案したコンスタンツェ・マンツィアリーは、ヒトラーを菜食主義者にした女性だといわれている。

ナチス・ドイツが精神病に極端なまでの関心を払い、ユダヤ人であったフロイトを拒否するアーリア的精神療法の開発をはかったのは、精神病を単純に劣性遺伝の結果、あるいはユダヤの血による劣化と短絡させたためだった。ナチス遺伝学の狂気ぶりを描く好著に、ベノー・ミュラー=ヒルの『殺人科学』があって、これがめっぼうおもしろい。動物行動学者コンラート・ローレンツまでがナチの片棒をかつがされた事情にも触れているのだ。」


「ところで、ナチス・ドイツのオカルト政治学に利用された『アガルティ思想』は、1970年代に世界のオカルト研究家の注目を集めた話題であった。それは、19〜20世紀東洋系神秘主義者の大立者ニコラス・レーリヒやブラヴァッキー夫人の研究が大流行したこともあるが、主として、フランス19世紀にあいついで登場した古代崇拝系のオカルティスト、ファーブル・ドリヴェとサン=ティーヴ・ダルヴェイドルの再評価から発した。

ドリヴェはナポレオンの政敵で、魔力をもつ古代言語の再興と、神秘的絶対政権の樹立を夢みた。サン=ティーヴは、このドリヴェの夢想を具体化させるため、アガルティと称する謎の王国の情報をひろめた。この王国には、12人の最高秘儀伝授者と世界の王が君臨し、オカルティックな方法で地球の全生物を支配している、というのである。この発想は、19世紀末の神智学運動にとりこまれ、各国におけるユートピアじみた霊的革命の拠りどころとなった。もちろん、ナチスはその典型だった。

〈中略〉

ナチス・ドイツは、アインシュタインとフロイトを代表とするユダヤ科学と精神医学を否定した。

それは現代哲学との決別を意味したけれど、なおドイツには、オカルトばかりでなく、宇宙旅行協会のロケットをはじめとする壮大な夢が渦巻いていた

いわば、ドイツ全体が、科学から哲学、芸術までをもふくめた、ひとつの『巨大な新世界』をつくりあげようとしていたのである。

その中でオカルティズムや擬似科学が果たした役割は、そのまま、不可思議な20世紀奇想精神の系譜を物語る。むろん、ドイツのオカルティックな道は、日本の第二次大戦裏面史にも通じていたのだ。本書は、その真実をさぐるための、きわめて刺激的な基本書になるはずである。

 

 


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